1. 福あーる
  2. 活動日誌
  3. お役立ち情報
  4. 自宅で行える摂食嚥下障害に対するリハビリ①~食べられなくなる原因は?

2024/04/10

自宅で行える摂食嚥下障害に対するリハビリ①~食べられなくなる原因は?

私たちは、「かむ」「食べる」「飲み込む」=摂食・嚥下(せっしょく・えんげ)を通して、食べ物を摂取しています。
その際、食べ物が誤って気管に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」や、食べ物をつまらせて気道をふさぐ「窒息(ちっそく)」を予防しながら食べる必要があります。
摂食嚥下障害(せっしょくえんげしょうがい)の原因はさまざまであり、脳梗塞後遺症などの病気によって起こることもあれば、加齢によって徐々に機能が低下して起こることもあります。
今回は、自宅で美味しく・楽しく・安全に「食べる」方法について言語聴覚士が2回にわたって解説していきます。1回目は摂食・嚥下のメカニズムと、食べることが難しくなると起こることについてお話したいと思います。

「食べる」とは?

「食べる」とはどういうことでしょうか?普段、食事をする時に「私はどうやって食べているのだろうか?」「なぜ食べるのか?」と考えながら食べている方は少ないのではないかと思います。

食べることの目的には
①生命維持に必要な栄養素の摂取
②エネルギーや抵抗力をつける
③コミュニケーションの場を作る 

という主に3つがあります。

また、「食べる」という行為は、ただ「食べ物を飲み込む」だけではありません。
実際には、私たちはいくつかの工程を経て、食べ物を口から体の中に取り込んでいます。この「食べる」という一連の行為を「摂食・嚥下(せっしょく・えんげ)」といいます。

摂食・嚥下のメカニズム

「食べる」メカニズムをわかりやすく説明するのに「摂食嚥下の5期モデル」というものを使用することがあります。具体的には、「認知期」「準備期」「口腔期(こうくうき)」「咽頭期(いんとうき)」「食道期」の5つの段階に分類されます。以下にそれぞれの期について説明していきます。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 1_20240330_205009_0000-1024x769.png

認知期 =食べ物の認知・食欲=

食べ物を認識して口に入れるまでの段階です。食べ物をみて、認識し、どの食べ物をどのくらいの一口量で口に入れるのかを判断します。ここでは判断をするまでの段階です。

(例)「りんご」をみて、色や形、においなどから「これは食べられるものだ」と判断する。

準備期 =もぐもぐ=

食べ物を実際に口に運んで咀嚼(そしゃく)する段階です。咀嚼とは「食べ物をかみくだいてすりつぶす」ことです。咀嚼をすることによって、口の中で飲み込みやすい大きさや形状にしていきます。また、よくかむことで味や食感が舌に伝わりやすくなったり、唾液(だえき)や胃液が分泌されやすくなります。

口腔期 =口・のどの奥までスルッと=

舌を使ってのどの奥に食べ物を送り込む段階です。ここではまだ「ごっくん」する直前の段階です。

舌を使って奥に送り込むため、特に大切なのが舌の動きです。約0.5秒というあっという間の時間で食べ物をのどの奥に運ぶ素早い動きをしています。

咽頭期 =ごっくん=

ここでようやく「ごっくん」と飲み込みをする段階です。「嚥下反射(えんげはんしゃ)」という体に備わった反射が起こります。この嚥下反射では、食べ物を一気に食道へ送り込むことと、気管に食べ物が入らないように蓋をする役目があります。

食道期 =食道から胃へ=

「ごっくん」した直後に食べ物を食道から胃へ運ぶ段階です。重力と食道の蠕動運動(ぜんどううんどう)によって食べ物が胃に落ちていきます。

このようにして、「食べる」という行為を私たちは意識することなく行なっています。これらの一連の工程の中で、どの部分が障害されても「上手に食べることができない」「飲み込めない」といった摂食嚥下障害が起こります。

摂食嚥下障害とは?

食べる事や飲み込むことに問題が起こることを指します。「摂食障害」というと「過食症」や「拒食症」などがありますが、「摂食障害」は心理的要因に基づく食べる行動に問題が起こるのに対して、「摂食嚥下障害」は病気や加齢などを要因として、食べる機能に問題が起こることをいいます。
摂食嚥下の5期モデルで、それぞれの段階での問題となっていることをご説明します。

認知期の問題点

認知症、高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)、意識障害、ストレスによる食欲不振などの問題が挙げられます。
脳の機能が低下し、食べ物を認識しづらくなると、「おいしそう」と感じることができず、食べる行為に移行できなくなります。そのほかにも身体機能の低下で手が動かせず自分で食べ物を口に運べなくなることも認知期の障害として挙げられます。

準備期の問題点

主に咀嚼(そしゃく)ができないことが問題として挙げられます。
歯がないことや、咀嚼に必要な筋力が低下していること、認知症などによってかむ方法がわからなくなり咀嚼が難しい場合に起こります。

口腔期の問題点

舌の機能の低下が問題として挙げられます。
口腔期では舌の機能によって食べ物をのどの奥へ運びますが、舌の動きは筋肉によって行われています。加齢やパーキンソン病などの筋肉の病気であったり、脳卒中後遺症による麻痺、認知症などによる脳機能の低下で舌の動きが乱れると食べ物を正確にのどに送ることが難しくなります。その結果、誤嚥(ごえん)を引き起こすことになります。

咽頭期の問題点

嚥下反射の問題が挙げられます。つまり、「ごっくん」が難しくなる状態です。
嚥下器官の衰えによって嚥下反射が鈍くなると、食べ物を通過するタイミングと反射がずれることになります。飲み込みのリズムがずれるため、誤嚥を引き起こす原因となります。

食道期の問題点

この期の主な問題点は飲み込んだ食べ物の逆流です。胃酸も一緒にせりあがってくると、食道が焼けて逆流性食道炎が起こることがあります。逆流の原因としては加齢などによる食道の蠕動運動の低下が挙げられます。

食べることが難しくなると起こること

上記のように、「食べる」工程のどこかで問題が起こると上手に食べることが難しくなります。
では食べることが難しくなると、どのようなことが起こるのでしょうか。こんな経験はないか確認してみてください。

①誤嚥(ごえん)

食べ物や唾液などが、食道ではなく、声門(声帯のある部分)を越えて気管に入ることをいいます。
気管に入ると口の中やのどにいる細菌やウイルスが、食べ物や唾液と一緒に肺に入っていき、肺炎を起こす原因になります。

●むせて食べられない
●食べると声がガラガラになる
●痰の量が増えた
●のどに何か残った感じがする

などがあると誤嚥を疑う要注意サインです。

誤嚥と間違いやすいワード:誤飲(ごいん)

食べ物ではないもの(たとえばボタンやオムツなど)を誤って飲み込んでしまうことを言います。

②残留(ざんりゅう)

飲み込んだ後も、食べ物が口の中とのどに残ることをいいます。特に、喉頭蓋谷(こうとうがいや)というところと、梨状窩(りじょうか)というくぼんでいる2か所に残りやすいと言われています。

※喉頭蓋谷:喉頭蓋は、飲み込む時に食べ物が気管に入らないように閉じるふたのことで、舌根と喉頭蓋の間にある部分を喉頭蓋谷と言います。
※梨状窩:食道の入り口付近にあるくぼみのことを言います。

舌や頬の筋力が低下すると食べ物を思うようにのどに運べなくなり、口の中に食べ物が残りやすくなります。本人は飲み込んだつもりでいるため、意識せず、違うタイミングで食べ物が気管に侵入してしまう場合があり、それが誤嚥につながります。飲み込んだ後に起こる誤嚥の大半は、残留した食べ物が原因です。

③窒息(ちっそく)

食べ物などによってのどや気管をふさいでしまい、呼吸困難になることを言います。窒息を起こしやすい代表的な食べ物は「おもち」です。

まとめ

「食べる」という行為を私たちは意識せずに行なっています。実はたくさんの複雑な動作が組み合わさって行われていますが、何か一つでも問題が起こると上手に食べることが難しくなります。「自宅でいつまでも美味しく・楽しく・安全に」食事ができるため、言語聴覚療法というお口にかかわる専門のリハビリでは、どこに原因があるのかを評価して訓練を行なったり、問題を早期発見し、今ある機能が衰えないように維持する体操なども行なっています。

福あーるには言語聴覚士が在籍していますので、お口の事や飲み込みの事で気になる方はぜひ一度ご相談ください。ご相談はホームページからも受け付けております。福岡市早良区を中心に、城南区、中央区、西区、南区、那珂川市で訪問看護・リハビリが必要な方のサポートを行なっております。

次回、経口摂取をするにあたっての5つのチェックポイントについてお伝えします。

  • facebookでシェア
  • hatenaでシェア
  • xでシェア
  • lineでシェア

記事一覧に戻る

カテゴリCategory

年月Archive

  • 2024年

訪問看護・リハビリでお悩みの方、
お気軽にご相談ください

株式会社福あーる訪問看護リハビリステーション

〒811-1101
福岡市早良区重留2-19-5-1アニィ重留 B-101