2024/01/05
10年経過した脳血管障害後遺症 -リハビリに効果はある?
脳血管障害のリハビリは一般的に発症から6か月が回復のピークと言われます。
病院においても、リハビリのために入院できる最長期間は180日と制度上決まっています。
入院中のリハビリは、ほぼ毎日あり、長い方では1日3時間実施されます。
しかしほとんどの方は在宅生活がスタートすると、リハビリ終了となるか、週に1~2回程度になります。
入院中に練習したことも日々生活していると徐々に自分の動きやすい動き方になり、指摘する人もおらず、動きの「くせ」が出てくるようになります。
確かに脳血管障害において「麻痺」として失ってしまう機能は再生医療の進歩を待つほかないのかもしれません。
しかし、その動きづらさは、ただ麻痺のせいなのでしょうか?何年後からでもリハビリをスタートすることで、一緒に動きづらさの理由を見つけて、今よりできることを増やしていけることがあります。
脳血管障害とは?
脳の血管がつまる脳梗塞と、脳の血管が破れる脳出血、クモ膜下出血があります。
脳血管障害は死亡に至るケースもありますが、一命をとりとめる事も多く、次にやってくるのが脳のダメージによる後遺症です。
脳のどの部分で起きたか、小さい血管か、太い血管かなどで症状が全く変わります。
麻痺が現れる方もいれば、体の麻痺はないのにしゃべることができない、飲み込むことができない、記憶障害があるとか、足は動くのに手だけ動かないといったあべこべな事が起こったりもします。
脳血管障害と介護との関係
要介護状態になった方のうち、原因をみると第2位が脳血管障害です。
(第1位は認知症)つまり、後遺症によって、ご家族による介護が必要になったり、自宅ではなく施設入所となる場合があります。
リハビリCase1: O様 60代男性 脳血管障害後遺症
【症状】
脳出血後遺症による右半身麻痺、失調症状(動かそうとすると振える)、感覚低下。普段は車いすで、左手を中心に使用する生活をしている。
【本人のご希望】
これまで自主トレやデイサービスに通って筋トレや歩行訓練などを行なってきた。
今後さらに生活能力の向上を図りたい。右手を使って字を書いたり、箸で食事がしたい。
【リハビリからみたご本人の状況】
右手を挙げることはできますが、失調(振え)症状があり、細かい動きは苦手な様子でした。右手は使いづらいため生活上での使用はほとんどなく、左手を主に使用していました。
また左手足を中心として長期間生活していることで、体が自然と左重心になり、本人の中ではまっすぐしているつもりでも、体や首が左に傾いていました。
福あーるのリハビリ内容
まずは、骨盤の位置を修正したり、ご本人に鏡を見てもらいながら、体のまっすぐがどこかという感覚の入力を行いました。
さらに、右手を使わない生活に慣れているため、両手を使うという体験の中で、右手も一緒に動かす練習をしました。具体的には両手でテーブルを拭いたり、新聞紙を丸めたり、開いたり、ちぎったり、という動きをしました。
そうすることにより脳に「右手も使える」という情報をインプットしていきました。
もちろん、左のほうが強いのでついつい右手の仕事を奪いがちになります。
そこも「左手がでちゃうね~」と自分でいいながら行うことで、自分がどんな動きをするのかがわかります。
徐々に見えてきた日常生活での変化
日常生活上でも変化が見え始めました。
本人の言葉としては「腕が二本あることがわかる」と表現されました。
布団をたたむとき、ドアを開けるとき、服を着るときに「右手が出るようになった。」とおっしゃられました。
右手を使うことに慣れてきたところで、「字を書く」という練習に入りました。ただ、書くにしても細かい動きは苦手のため、太いマジックを使いました。
太いので握りやすいこと、インクの出方がいいので筆圧もいりません。
大きな新聞紙に長い線をひきました。
失調があるので、止めたいところで止めることが苦手です。いったんそれは置いておいて、書く楽しさを思い出してもらおうと思いました。
徐々にご本人も要領がわかってきて自然と止めるタイミングがつかめるようになってきました。線からうずまき(つまり円)を書くようにしていきました。
次に自分の名前を書きました。自分で書いて、読めたとき、「病気になって初めて字を書いた」とおっしゃられました。
発症して10年以上経過しても、リハビリで改善できることもある
O様は発症してから10年以上が経過しています。麻痺はありますが、リハビリを始めてみると、その麻痺の手が「使えない」のではなく、「使わなくなっていた」ことに気づきました。リハビリがかかわることで、実際に自分はどれくらい動けるのか、どういう手段を使えばできるのかを一緒に考えられたことで、今回、ご本人が望んだ「字を書く」という目標達成につながりました。
そして10年経っていてもできるようになることがあると、私たちも教えていただきました。
まとめ
O様は次は「箸を右手で持ってラーメンを食べる」という夢に向かって今日もトレーニングを行なっています。
O様のようにリハビリがかかわることで、体の使い方や動かし方を見直すことができます。もしも、「本当はこんなことをやってみたい」、「できるようになるか不安だけど聞いてみたい」などのお悩みがございましたら、一度、ご相談していただくのも一つの方法かもしれません。